映画ざんまいの週末でしたー『ヘンダーソン婦人の贈り物』『不都合な真実』『硫黄島からの手紙』ー

映画を見に行こうという気持ちの余裕を持ったのは三ヶ月ぶりだと思う。2時間あまりの余裕があれば、気持ちの切り替えのために見に行けばいいと思うのだが、そういう器用さのない自分がいる。

卒業論文の査読も終わって、期末試験が始まると、一瞬だが気持ちの余裕が訪れる。昨日は、ちょっと込み入った要件を話した後に、映画館まで自転車で出かけて、途中飲み物を買い、ふらふらと街を眺めることのなんと楽しいことか。こういう時には、何を見たいではなく、何でもいいから見たいという気持ちである。

映画館に着いたらすぐに今からすぐに見られる映画を探すと、『ヘンダーソン婦人の贈り物』という作品が目に入った。よく知らなかったが、渋そうな俳優が、戦時中の英国で裸をまじえたレビューを上映し続けた逸話を映画化したとのこと。演劇興行というやくざな世界に入り込んだ英国貴族婦人の破天荒な振る舞いと劇場支配人との落ち着いたやりとりを見ていると、映画の伝統の重みを感じさせる。俳優のほとんどが渋めなので、私も含めて観客のほとんどが高齢者であることはしようがない。でも、映画館に行くと決意するまでのエネルギーが嘘のように吹っ切れる作品だった。

今日は、二本見た。これも少し遠い別の映画館だが自転車で行った。最新のシネコンなので、ネット予約ができた。しかも、一本目の『不都合な真実』は、環境保護キャンペーンとタイアップしているので、なんと500円で見られた。大統領になりそこなった元ゴア・副大統領が、選挙後の主たる活動として地球温暖化問題に取り組んでいるが、世界中で開催しているスライド講座の模様を中心にして構成された秀逸なドキュメンタリーである。ゴア元副大統領とその父親は、インターネットなどの通信政策や高速道路網の整備で有名であるが、実はその背後には、地球科学のバックボーンがあることがわかり驚いた。京都議定書に彼が貢献したのは、もう一つのライフワークだった。彼のプレゼンのうまさは、スティーブ・ジョブス(アップルCEO)にひけをとらないし、それが政治臭を感じさせるにしても、こういう地味であるが、実は根本的に重要なテーマに取り組む彼のメッセージを無視することはできないであろう。

続けて、二本目の映画も見た。『硫黄島からの手紙』は、太平洋戦争の本土空襲の死命を制する日米間の争いを、米国側から見た『父親たちの星条旗』と対をなして、日本側から見た映画として上映された。米国資本でありながら、ほぼ全編日本語であり、日本側の当時の時代考証をしっかりした映画であった。史実ではないにしても、降伏した日本兵を米兵が銃殺するシーンを入れたのにはかなりの勇気がいったと思う。

戦争というのは、個人の思いを超えた力を持つものである。そのため、栗林中将が米国育ちであることが、どこまで守備戦術に影響したのかもわからないし、実際にリベラルな態度かどこまで可能だったかというと疑問も残る。しかし、そうした史実はともかくとしても、国のバイアスを超えた理解を深めようという思いが日米俳優・スタッフに伝わる作品である。

映画にとりつかれた人たちの側に、しばし寄り添った時間であった。

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