紛争地域からの映像は、様々な媒体を通じて伝えられる。それはニュース性がある点で貴重である。しかし、戦闘場面や悲惨な光景を見続けると、視聴者の意識には、その地域ではそうした事件との関連でしか思い出されない作用が働く。つまり、その地域では戦闘しかないのだと。
けれども、戦闘に明け暮れる兵士はともかくとして、一般人は戦闘の被害者であっても、加害者ではない(はずだ)。かれらの生活こそが実は大事なのだと思う。もちろん、紛争地域における一般人の生活にも紛争の影響は色濃く反映しているが、だからといってそれがすべてではない。紛争地域をテーマにしたジャーナリストの仕事では、その生活を取材した作品に強く惹かれる。つまり、戦闘があってもなくても、どこにも同じような人々がいて、ごく普通の喜怒哀楽をまじえた生活があるのだと。
アジアプレスの玉本英子さんは、イラク・トルコ取材を精力的におこなっているが、戦闘場面よりも、一般人の生活に焦点を当てて取材している。彼女に、「なぜ戦闘場面じゃないの?」と聞いたことがある。すると、戦闘場面を撮影することも大事だけど、市民生活を撮る方がもっと大変。でも、それを伝えることが私の彼らに対するお返しだと思うというような返答があった。もちろん、兵士を撮るとしても、戦闘場面ではなく、日常生活を撮っている。
そんな彼女の講演会が10月20日精華大学で開催される。
テーマ自体は、ビデオジャーナリズムの可能性についてだが、イラクの最新映像もふんだんに取り混ぜながら、話してくれます。
ぜひお越しください。
以下が案内です。
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第92回 マルチメディア講演会
日時:2006年10月20日(金)
時間:18:00-19:30
会場:情報館メディアセンターホール
http://www.kyoto-seika.ac.jp/access/index.html
講演者:玉本 英子(アジアプレス・インターナショナル ビデオジャーナリスト)
事務局:情報館メディアセンター(Tel: 075-702-5140)
入場無料
演題:
報道を変えるハンディカメラの可能性
―戦争後のイラクでは何が起こっているのか-
講演要旨:
近年の海外ニュースにおいては、東アジアやイスラムの事件を聞く機会が増え ました。しかし断片的なニュースがどれだけ報道されても、わたしたちには理 解できないことが多くあります。海外報道を認識するためには、その地域や時間について考える視点を育てることが必要です。今回は玉本氏に、現地イラクの映像と共に、ビデオジャーナリズムについてお話しいただきます。参加者の皆さんもディスカッションで多いに語り合いましょう。
講演者プロフィール
玉本英子(タマモトエイコ)1966年、東京都出身。アジアプレス 大阪オフィス 所属。デザイン事務所を退職後、ビデオ取材を始める。クルディスタン、コソ ボ紛争、アフガニスタンの女性たちなど、ビデオを中心に取材、発表。「明日起こる危機〜コソボ」(テレビ東京)、「伝統音楽に生きる〜トルコ」(NHK福 岡)、「イスラムに生きる〜公開処刑されたアフガニスタン女性」(NHK総合)、「Lifting The Veil」(イギリス・Channel4ドキュメンタリーDispatches-アフガニスタン取材)など。イラク武装勢力「アンサール・スンナ軍」「イラクの聖戦アルカイダ機構」インタビュー(2005)、イラク軍従軍取材など、テレビ中継を含めた現地リポート(日本テレビ)など。共著に『アジアのビデオジャーナリストたち』(はる書房)がある。
(ウェブサイトより http://asiapress.org/index.html)
アジアプレス・インターナショナルは、文章や写真、映像を通して、アジア、そして世界の様々な問題を伝えていこうとするジャーナリストの集団です。 1987年10月、フリーランスのフォト・ジャーナリストの集団として発足しました。アジアに古くから伝わる「結(ゆい)」のようにお互いに援助しあう心を持つ、インディペンデントなジャーナリストのネットワークと位置づけてもよい かと思います。
(以下中略)
現在、アジアプレスのメンバーは約30人。メンバーの活動領域は、アジアにとどまらず世界のほとんどの地域におよんでいます。テーマも政治から文化まで 多様化しています。
(以下中略)
私たちはアジアの人々から学び、そして勇気づけられる体験を通じて、インディペンデントなジャーナリズムの極北に立つ意志を固めようとしています。アジアプレスは独立系ジャーナリズムの潮流を形成しながら、メディア変革を主体的に担っていく決意です。
アジアプレス・インターナショナル代表 野中章弘
(ウェブサイトより http://asiapress.org/index.html)
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