まだ五月なのに、もう祇園祭のお囃子が聞こえる。まさか?
先週末、出張帰りに本屋に寄ろうと、四条烏丸に降りたところ、笛と鐘の音がしていた。観光ブームにあやかって早めにデモンストレーションでもしているのかと思ったので、近づいていった。でも、人だかりもなく、上からただ音が聞こえてくる。二階を見あげると、窓を開け放って練習の真っ最中だった。そこは、函谷鉾保存会の事務所だった。そういえば、祇園祭の時には、ここに大きな鉾がそびえ立っていて、二階から出入りしていたことを思い出した。
あいにくiPodを持参していなかったので、携帯電話で録音(Pure Voice形式)し、それをMP3に変換したら見事に音が割れてしまった。申し訳ありません。写真も四条通りの真ん中まで出て撮ったが、やはり無理があった。これもすいません。
祇園祭は、7月17日の山鉾巡行を頂点に、13日頃から夜間に歩行者天国になって、分散している山鉾から微妙に異なる音色が聞こえてくる。この風情は夏の風物詩としてはもってこいである。
しかし、祇園祭はこの時期だけでなく、7月一ヶ月間行われる行事である。実は、私は、八年前に山鉾巡行の時に、長刀鉾の前を歩いたことがある。知り合いの息子さんが稚児さんの脇に控える禿(かむろ)役で登場し、私はその関係者として祭りの内側にいたのだった。私自身は、気楽な身分で食事があればご相伴にあずかり、儀式があればそれに同伴するということだけで、金銭的にも精神的にも気楽な立場だった。
ただ、稚児さん関係者という、特権的な立場になるためには当然ながらそれなりの負担は覚悟しないといけない。しかも、小学生の稚児さんであるから、体調を崩すときもある。この時には稚児さんが風邪だ体調を崩し、山鉾巡行前日には代役を立てないといけないかとも思われたくらいだった。幸い、稚児さんの体調も小康状態になり見事大役を果たしたのだったが、それをめぐる周辺の右往左往は今でも忘れない。
かくいう内輪の話はともかくとしても、お囃子の音色を聞くと、京都の暑い夏を引き寄せそうだ。そのせいかもしれないが、今日は、初夏の気候であった。芽をつけた花々も次々に咲きほこり、観光客も町に溢れだした。少し汗ばむ気候の中を自転車で移動するのが最もいい季節となった。