映画『ザ・コーポレーション』とシンポジウム

 昨日、大阪のアートプロジェクトで有名な應典院應典院 – ひとが、集まる。いのち、弾ける。呼吸する、お寺。というお寺で、映画上映とシンポジウムが開かれた。

映画は、2時間半の長尺で、マイケルムーア、ノーム・チョムスキー、ヴァンダナ・シバ、ナオミ・クラインなど著名な企業批判派も登場し、かなり貴重な古いCM映像や現役CEOなどへのインタビューなどずっしりとした重量感がある内容になっている。環境や人間の健康破壊をおこなう構造的な問題を企業が是正できないことを告発している。ドキュメンタリー映画は、制作者の主張をできるだけ抑え映像によって語らせるタイプと、逆に制作者の意図自身をストレートに表現するタイプとがある。この映画は、後者の典型である。

私自身は、ドキュメンタリー映画は好きなのだが、どちらかというと前者の方が好きだ。後者だとあまりにも演説調になってしまうからだ。特に、長尺である場合には、少し疲れてしまう。しかし、ともあれ、明確な主張をしっかりと伝えようとする一貫した姿勢は、レベルの高い制作陣の才能がほとばしっているものだ。

ただ、このイベントでは、映画よりも、その後のシンポジウムの方がはるかに面白かった。應典院住職の秋田光彦さんはじめ、シンポジウムのパネリスト新川達郎(同志社大学)と田村太郎(edge実行委員長)、コーディネーターの山口洋典さんなど芸達者なメンバーが集まって議論した。

表現力豊かな登壇者が、映画に対する感想や映画の長短とりまぜた指摘を積み上げていき、企業と市民の関係についてわれわれに考えさせてくれた。ただ、シンポジウムで語られた映画の課題・問題点についてはそのとおりだが、それらを踏まえた「正しい」映画を作るとすれば、それはもはやアートではなくなる。娯楽作品とドキュメンタリー作品との相違というか、アートとアドボカシーとの相違でもある。どこに立ち位置を置くのかによって視点が異なってくる。

今回の企画は、秋田さんをさらに勇気づけるために、山口さんが應典院職員として赴任する直前企画である。大学コンソーシアム職員として10年間勤務しながら、各地のNPOその他のイベント・調査に多方面に活躍された方が新しい職場で新しい試みをはじめるというアナウンス的な意味もある。

山口さんのご検討を祈ると共に、彼に頼られる存在になれるよう私も努力したい。

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