最近、映画を見ていないなあ。
富山にいる時には、映画サークルに入って月に一本は見ていたのに。もっとも、最後の6年間は忙しくて、サークルや映画館から遠ざかったので、たいしたことはいえないが。
今日は、仕事が一区切りついたので、映画館に行こうか、それともビデオを借りに行こうかと思案した。でも、家で食事を食べることにしたので、ビデオを借りに行くことにした。
少し前に話題になった『モーターサイクル・ダイアリーズ』を借りた。
キューバ革命の立役者の一人である、アルゼンチン人エルネスト・チェ・ゲバラの若かりし頃が舞台だ。南米をおんぼろバイクで旅して、民衆の現実と触れあった様をドキュメンタリーにした映画である。映画の佳境に入るのは、バイクの旅ではない。途中で、バイクが壊れて、徒歩で歩き出してから、さらに民衆と触れあう密度が濃くなる。思想的理由で土地を追われて仕事を求める労働者やクスコ・マチュピチュのインカ文明の奥底に触れた。バイクが壊れたことが、逆に彼らの視野を広げたのである。
もちろん、主人公二人が上流階級出身でありながらも、貧困層への関心を抱いていたのは、旅立つ以前からであるが、旅は彼らの気持ちを強く固めることになった。
ストーリー自体は、南米の貧困の現実と触れあうことになるが、南米の自然や人々のおおらかさが、それを包み込む広さを持っている。
ロード・ムービーは、米国の『イージーライダー』以後定番となっているが、荒野や農村自体はあくまでも脇役である。あるいは、都市との対比で語られることが多い。しかし、この映画では、むしろ辺境の地にあるインカ文明や荒野が主体となっている。それにバイクの旅ではなく、徒歩の旅であった。この点が制作者の視点の相違であり、だからこそこの映画が評価されるゆえんなのだろう。
この映画を夜見て、翌日は、大学まで片道1時間の距離をゆっくりと歩いていった。荒野も豪雪もないが、映画の雰囲気を少しでも感じるいい休息になった。