夢見る自分を表現するメディアーフリーペーパーは、今が旬ー

なんとなくメディアのことを知っているようで、実は今の流れを知らなかった。これこそ市民メディアだ、というメディアがあることを。

今夜は、京都のフリーペーパーSCRAP誌編集長加藤隆生さんの話を聞いた。京都の若者シーンでは、3万部を記録する注目すべき雑誌であるとのこと。今回の企画は、学生が企画したのだが、始まる前はあまり期待していなかった。フリーペーパーというと、クーポン付情報誌やバイト誌、あるいはミニコミ誌的なマイナーな雑誌が多い。あるいは逆に、商業雑誌の凋落もあり、いまさら紙誌面の時代ではないだろうとも思っていた。

しかし、実は、マスメディアではない、自己表現メディアとしてフリーペーパーは大きな可能性があることを教えてくれた。

  1. まず、マスメディアにはできないことが実現できるメディアであるが、それは決して新しい課題を探すことではなく、むしろ自分の中にこそある、ということである。日常のありきたりの情報や事実を、自分の視点から見ると、突然、大きな変化が起こって、相手の心に届くパワーを持つことになるのである。
  2. フリーペーパーというアナログメディアは、Webから現実世界へとつなぐメディアとして有効に機能するのである。Webと違って、フリーペーパーを見る読者は、意外に高いハードルを越えて、新しいことを探している人をターゲットにしている。それを読んだ読者は、そこからSCRAPが主催するイベントへも動いていくのである。
  3. 従来のミニコミやフリーペーパーのように、自分のアイデアが表現されていればそれで満足するのではなく、むしろ読者にどう訴求力を持つかを意識することで、絶えず読者との接点を欠かさない。読者との間にメディアがあるという発想である。
  4. 編集会議は、編集長と毎回希望者がやって来るボランティアスタッフとの間に垣根を作らず、同じ目線で企画を考え、取材し、原稿を書くのである。会議に来た人だけで企画を決めて、その中での役割分担を決めることで、責任体制を明確にしてボランティアの使命感をかき立てるのである。

SCRAPは、ビジネスライクではない個人の主張が明確に出せる点で、フリーペーパーの一つの流れに位置しているが、それに対する若者の支持を強く感じているのである。Web全盛の時代になおもアナログメディアの特性を生かしつつも、自分がやりたいことができるメディア、自分が夢を見られるメディアとして生き続けられる可能性を拓いた加藤さんは大変大きな貢献をしているのである。若者がその新しい流れを確たるものにするとすれば、メディアとわれわれとの接点は更に広がることになる。

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