異なる分野の人から、新しい発想をもらう(ファシリテーション・セミナー)

 3月3日ひな祭りの日に、大阪のビジネス街で開かれた。ファシリテーション・セミナーに参加した。初参加だったためか、前日からワクワクして寝つけない状態のまま参加した。参加者は20名ほどだが、同じような気持ちで参加したメンバーも多かったようだ。

ファシリテーション・グラフィック―議論を「見える化」する技法 (ファシリテーション・スキルズ)

ファシリテーション・グラフィック―議論を「見える化」する技法 (ファシリテーション・スキルズ)

  • 作者: 堀公俊,加藤彰
  • 出版社/メーカー: 日本経済新聞社
  • 発売日: 2006/09
  • メディア: 単行本
  • 購入: 11人 クリック: 74回

最初の自己紹介で、出身地、職種、参加動機を全員が話すと、その多様なこと。関西からの参加は当たり前で、中国、四国、横浜など遠隔地からの参加者も多かった。参加申し込みしたけどすぐに定員一杯になったので、無理を言って参加させたもらったという方もいた。職種は、建築・薬業などのコンサルタント、外資系社員、企業や団体人材トレーナー、看護士、それと養護・高校・専門学校・大学教員などもいた。教員が四、五人いたのは、いかに教育現場が厳しいのかを反映している。

私は、高校教員(男)、外資系ホテル人材トレーナー(女性)、保健士研修専門職(女性)、看護士(女性)と同じグループだった。女性が多いというのもいいが、発想や経験がかなりユニークだったので初めから入り込むことができた。研修時間は、午前10時〜正午、午後1時〜6時までであった。こういうセミナー参加者は、当初から動機付けができているのであり、その成果は出やすい。

以下が、セミナーの内容である。

0.ファシリテーションとは?

   自己紹介

   ファシリテーションとは?

   ファシリテーションの四つのスキル

1.場のデザインのスキル

   場をデザインする5つの要素

場の雰囲気づくり

場をデザインする → グループ演習

2.対人関係のスキル

   聴くことが安心感、信頼感を与える→ ペア演習

    質問の使い分け

    柔らかい自己主張 → グループ演習

3.構造化のスキル

主張を明確にする・議論の全体像をつかむ

    議論を書きとめてみよう!  → グループ演習

4.合意形成のスキル

言葉の奥にあるものを探る

    対立解消のやり方

    今日習ったことを総動員する  → グループ演習 

5.明日からやれること

  (まとめ) あなたは明日から何をやる?

ただ、面白かったのは、こうしたセミナーでは講師が予定していたスケジュール通り進むものだが、実際にはそうではなかった。たとえば、ファシリテータの役割について、「中立的な立場で」対応することになっているが、講師自身がそれへの迷いを正直に言ってくれた。そこで、「中立」よりも「公平」「公正」という反対意見を聞けるというと理解したいと説明してくれた。そうした講師のオープンな姿勢が参加者からの問題提起を呼んだのかもしれない。

「場をデザインする5つの要素」というセッションで、目的、目標、やり方・スケジュール・時間配分、メンバーと役割分担、ルールと方針のそれぞれの解説が行われた後、参加者から「目的と目標」の違いがわかりにくいという指摘があり、参加者全体がかなりのやりとりがあった。目的は方向性であり、目標は最終ゴールであるという説明が逆ではないかという指摘である。あるいは、相手の話を判断抜きで聞く「傾聴」を求めながらも、話し合いを方向付ける意見を言うという双方を求めることが矛盾ではないかという質問にも時間を割いた。私自身もこの疑問を持っていたのだが、実際に、ペア演習で相手の話をひたすら聞くことに徹すると、不思議に自分と無関係な話題のように聞くことができた。理屈ではなく、実戦経験の重要性を認識した次第である。

グループ演習では、「料理がおいしくて、オシャレなイタリアレストランの共同経営者として、禁煙か、喫煙かのいずれかを緊急に決定しなければいけない」という設定で話し合った。メンバー全員が禁煙派だと思ったので私はあえて分煙派の論陣を張った。すると、なんとなく抱いていた「オシャレ」や「おいしい料理」のイメージを互いに明確にすることができ、イメージの共有化が図られていき、最終的には合意にいたることができた。現実にはここまでうまくいかないにしても、意見の違いを超えて合意するきっかけとなる。

8時間のセミナーが終わり、参加全員が達成感とほどよい疲労感に襲われて、そのまま夕食へとなだれ込んだ。セミナーでは他のグループの方と親しく話せなかったが、ここではみっちり話せた。何十年も医療コンサルタントをしていて、そこで編み出した文章記載方法やまとめの書き方は、一級品であった。そのエキスを早く吸収したいと思う。

ファシリテーション・グラフィックを早く上達することが当面の課題である。今が旬のツールであるが、その背景にある人間観を見つめていると、単に欧米の輸入ツールと切り捨てることはできない。吸収すべき事は多い。

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