学生の学びを中心にしたカリキュラムー三科目連動型ー

 一週間の授業計画を決める時に、何曜日の何限目にどの授業を配置するのかを決めるは大変難しい。選択科目であれば、比較的簡単だが、学部や学科必修科目であれば、かなり苦労する。しかも、一科目だけならなんとかできても、二科目以上を連動させることは至難の業だといってよい。

そうした試みを実践している、ある大学・経済学部長から話を伺った。その学部は一学年700名程度であり、ご多分にもれず、授業について行けない、あるいは経済学に関心を持たない学生が多い。しかも、他学部と比べて、経済学部生の留年率は、飛び抜けて高く、それは学部存続にとっても死活的な問題と考えられている。

カリキュラム改革の柱は以下である。

  1. 講義科目「経済学入門」と、少人数授業の「基礎演習」とを連動させていること。
  2. さらに、外国語科目もそれらと連動させていること。
  3. しかも、月曜日から金曜日の一限から三限に「経済学入門」「基礎演習」「外国語」を連続させているので、受講生は一日ほぼ同じ顔ぶれで授業を受けることになる。

「経済学入門」は、他学部生も履修している。上記のカリキュラムを始めたのは、平成15年からである。前年の「経済学入門」の成績を経済学部とそれ以外の受業生で比較すると、ほとんど差がなかった。ということは、専門的な関心を持っているため、当然ながら成績が優位にあるはずの経済学部生の優位性が出ていなかった。

しかし、平成15年以後、毎年の統計を調べてみると、年々、経済学部生の成績が上昇していることが明らかになった。今年度末にはこのカリキュラムで教育された学生が卒業することになり、そこでの留年生の推移が明確になる。それによって、どこまで成果が上がったかわかる。

「経済学入門」は少数の教員が担当しているが、「基礎演習」は、学部教員全員が担当している。「基礎演習」では、「入門」の授業内容を理解させることを主眼としている。いずれの教員も経済学専攻であるので、「演習」で授業内を解説することが可能であるとのこと。しかも、これらの科目を連携させるために、E-learning教材を利用し、経済学部院生をTAにして、教員と学生との間をつないでいる。

これだけでも大変なことだが、さらに外国語科目も連動させている。この意図は、初年次の授業をできるだけ連動させることで、学生にとっては仲間作りが可能となり、大学側としては、学生の動向が把握できることである。三科目を連動させている学部は、わが国の大学でも極めてまれだろう。外国語の場合、非常勤講師依存度が高いので、そのスケジュール調節には頭を悩ませることだろう。

私は、この試みに対して、いくつかの意見を言った。

  1. 三科目連動型の試みは全国でもめずらしく先進的である。
  2. 欲を言うならば、これに情報処理科目を連動させれば、ほぼ完成形に近くなる。
  3. 他大学の場合、担当教員の密接な話し合いができないとすれば、TAを中心にした運営体制を敷くべき。

他大学での運営をアドバイスする時には、第三点を強調している。それは、第一、第二点を実現可能にする方策であるからだ。もちろん、自大学・学部には、院生がいないとか数が集まらないという障害もあるが、その場合は、他大学からも集めればいい。新しい教育体制を敷く時には、コンテンツについては教員に依存するが、授業運営においては、教員よりも、TAを中心にした方がいいと思うからだ。

一限から三限までを統一したカリキュラムで組むことが、学生の学びを促進することになるか疑問を呈する意見もある。しかし、私は間違いなく促進すると思う。もちろん、こうしたカリキュラムの決定過程や運営体制にもよるが、学生側から見た授業はどうあればいいのかを教職員が意識する点では、従来とは一線を画するものである。こうした試みが次々に現れてもおかしくない。そこまで大学教育の刷新が求められているのだから。

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