ゼミ生は、私の研究を育ててくれる

言語表現ことはじめ

言語表現ことはじめ

  • 作者: 筒井洋一
  • 出版社/メーカー: ひつじ書房
  • 発売日: 2005/03
  • メディア: 単行本
自己表現力の教室

自己表現力の教室

  • 作者: 荒木晶子,筒井洋一,向後千春
  • 出版社/メーカー: 情報センター出版局
  • 発売日: 2000/04/05
  • メディア: 単行本
  • 購入: 4人 クリック: 27回

 大学教育を専門分野にしながらかっこ悪いのは、なかなかゼミの運営がうまくいかないことである。

教員から言わせれば、学生のやる気が欠けていることであり、ゼミ生から言わせれば、教員に対する個人的嫌悪感や意図が不明であることという対立がいつも起こる。対立を解消しようとして個人面談を実施してきたのだが、本来相談すべき学生はまず来ない。しかたなく、来た学生(比較的前向きなタイプ)だけと個別に話しあう。面談では、個別の改善策が浮き上がってくるのだが、それを元に他のゼミ生と議論しても、それ以上の発展がないのであまり改善されない、という悪循環が続く。

こういう話し合いを、あまり知らない人とするならば、比較的楽である。しかし、ゼミ生だと、まあ、親代わりなので、逆に難しい。おそらく第三者のコーディネーターが間に入れば適切にアドバイスをくれるだろうが、それはあっても実践するのは当事者なので、結局はその工夫と努力が求められる。

その一方で、非常勤で日本語表現論を担当させて頂いた受講生とは比較的うまくいった。五年ぶりの講義だったので、講義自体は不満の残ることが多かったが、受講生が提出したレポートがすばらしかった。自分の夢を実践するということで、レポートを書いてくれたのだが、どれも面白い。むしろ、普段は考えない突拍子もないアイデアを真剣に考えてくれたのは感動した。お世辞抜きにして、いい学生達だった。こういう感動は、単発の講義であるからということも大きな要因だが、教師と学生の歯車があった、いや、今回の場合は、学生の能力の高さに助けられたのだと思う。ありがとう。

再びゼミに戻るのだが、妙案はないのかなあ。

私は、教師である以上に、研究者としてや人間として、たえず新しいことに挑みたいと思っているので、その乗りでゼミ生も行ってほしい。しかし、多くのゼミ生はそうはならず、大学になじめない、辞めようか、何をやってもわからない、現状から逃げたいなどで悩んでいる。

ユニバーサル化した大学なので、こうした学生の悩みに対処することは不可欠であることは重々わかっている。しかし、ほとんどがこうした悩みばかりというのはつらい。面談した夜やその時期は本当に不機嫌になる。夜も寝られない時もある。そこで、そういう時は、今後の研究についての仕事で夜なべすることにしている。結果として、こういう教育と研究の融合が成立することで、最後の一線で気持ちが維持できているのだろう。

別に青春ドラマのような教師と学生の感動的な体験を求めているわけではない。ただ、どうせ自分が生きている人生なので、悩む前に、動き出したら楽しいよ、ということがわかってもらえれば十分なのだ。

みなさんの悩みのおかげで、私の研究が進むという大変ありがたい状況です。

上の本はおかげですくすくと育っております。私をさらにいっぱしの研究者に育ててやってください。

そう考えると、すこし気が楽になった。

でも、みなさんの悩みが改善すればもっと進むはずですよ。

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