はっしーイベント1、 はっしーイベント2、 はっしーイベント3
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イラク日本人人質事件の被害者をめぐるわが国での「自己責任」の論争は、日本社会の危うさを露呈させた。被害者および家族に対する陰湿な嫌がらせを見ると、一体今は本当に今は平和なのかと疑ってしまう。
どう思うかは別にして、多くの人々がこの事件についてのメディアの報道を見聞きしたことと思う。
渦中の人物であった今井紀明君は、当時高校生であり、三名の被害者中最年少であった。自己責任のバッシングを受けた今井君の胸中を知りたいと思った女子大学生が、彼と会って、気持ちが通じた中で彼を見つめた10分間のドキュメンタリーを作った。
その作品をひっさげて、青春18切符で全国対話イベントをおこなっている橋爪明日香さん(通称:はっしー)が昨夜ラジオカフェに来て、語ってくれた。
お調子者の私は、ブログで、今、評判になっているハッシーに会いたいと思って出かけた。
開演前に出会った彼女は、驚くほどごく普通の学生であった。もう少ししたたかな学生ではと想像していたが、実際は、話しぶりも街で歩いている若者風(つまり、ジャーナリストっぽくない)だし、身なりもどちらかというと地味。でも、暇があれば、ビデオカメラかデジカメを持っている。レンズに向かって話すのに抵抗がある人も、彼女のほほえみながらのレンズだと話せてしまう。そういうタイプだ。
「全国縦断1000人対話の旅プロジェクト in ラジオカフェ」は、最初企画者の松浦哲朗さんとハッシーとの対話で始まり、10分間のビデオ作品『みんな、空でつながっている』の上映を経て、1時間以上参加者との対話をするという構成でだった。
彼女が人質事件に関わったのは偶然だった。映像NPO事務所にボランティアをしていたが、その事務所に、ある団体からカメラを回せる人がいればすぐに首相官邸に来てほしい、ということでわけもわからず彼女が行くことになった。その後も撮影することになったが、マスメディアのカメラの視線の冷たさを見て、私は彼らと違った暖かい視点で被害者を撮りたいと思い立ち、これを誰かが記録しなくては、と思うといても立ってもいられなくなり、今井君に会いに行ったとのこと。
会い始めには、カメラを回せなかった。今井君がとても嫌がったので、最初の三ヶ月はひたすら信頼関係を作ることにした。やがて、今井君自身が事件のことは記録する必要があると決心して、ハッシーのカメラに向かって話しかけることになった。
作品に現れた今井君の表情は、マスメディアを通じて伝えられた表情となんと違うことか。
「今井君がこちらを向いて笑っている。彼が笑っているのを初めて見た。」
参加者の多くがこういう感想を持った。
そして、
ビデオの最後に、今井君が「生きててよかった」という言葉を発するところで終わっている。
映像の質や音声の乱れがあっても、こういう作品は作者の思いがあることで十分その価値がある。しかも、作者自ら「この作品はまだ未完成なんです。どう完成させるかは、1000人のみなさんと対話する中で皆さんに作ってもらいたいと思っています」と語る。
プロが作った作品は1時間以上に及ぶことが普通であり、上映後の質疑時間が限られることも多い。はっしーは、むしろ対話することを中心に置いているため、あえて10分間にしているとのこと。何百時間も回したテープから完成版を作りたいという欲望をあえて抑えて、未完成版を持って全国を回る勇気に敬服だ。これこそ学生ができる試みだ。プロが同じ事をやろうとすると言い訳じみてくるが、学生だとこれでいい。こういう挑戦をすること自体に意味があり、マスメディアとは異なる市民メディアの面目躍如といったところだ。
イベントの最後に、私ははっしーに、
「ラストの今井君のあの言葉で終わるのは、編集中に相談した人の中では必ずしも賛成が多くなかったのでは?」
という意地悪な質問をしてみた。それに対して、彼女は、
「そうです。あまり多くなかったです。でも、私としては、この結末が一番しっくり行ったので、こうしました」と返答をしてくれた。
これでいいんと思う。誰がどう思おうと、自分の気持ちにはまるにこしたことはない。ましてや、この作品を持って全国を回るので、心を偽れないだろうから。
終了後の交流会の最後に、また私が彼女に尋ねた。
「ところで、1000人達成イベントで、現在は何名まで行ったの?」と聞くと、
「今日で150名くらいです」と答えた。
松浦さんが、「じゃあ、ラジオカフェの参加者が15名だったから、約一割だなあ。」
そこで、更に私が、「いつ1000人達成する予定なの?」と聞いたら、
「まだ決まっていない。大きなイベントで人が集まると、一人一人と話せないから嫌なんです。」
それに対して、お節介な私は追い打ちをかけるように、
「1000人達成するためには、最後に大きなアートイベントを開いて、参加者全員でお祝いしたらどうか」と提案したら、はっしーは、「それならやりたい。おもしろそうだ」と言ったので、
ラジオカフェ代表の福井さんが
「京都でするなら、お寺を借りて、今井君を呼んで、VJイベントでもやれば、3〜400人は集まるよ。やるなら、いつでも声を掛けて」と暖かい励ましをした。
これにははっしーは感動だったようで、最後の別れの言葉としては一番よかったと思う。さすがラジオカフェらしい。
余談だが、私もそろそろPodcastを始めようと思う。
その第一回作品をはっしーにしたい。
今朝、はっしーのブログを見ると、私の顔が写っていた。
作品は、先ほど公開した。
無編集なので雑音が入っているが、まずは処女作をアップすることでご容赦ください。
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