精華大には、有名な作品を作っているクリエーターが非常勤講師に来られている。
その一人に朝日放送プロデューサの松本修さんがおられる。彼は、88年から始まった「探偵ナイトスクープ」を担当している。いまだに視聴率20%を記録するお化け番組だ。その彼から、この番組の舞台裏を書き留めた新刊書を贈呈していただいた。見開きには、毛筆で「去年の講義をベースに書きました」としたためてある。
松本さんとは、1995年に阪神大震災直後に会っている。前任校で、言語表現科目の学生向け講演会にお呼びした。しかし、震災で被災されたので無理だと思ったが、来ていただいた。1月17日が震災当日で、講演会が1月25日のことだった。何という義理堅い方なのだろうか。その頃の顛末も本書に詳しい。
精華大学に来て久しぶりにお会いして以来、時々お話しすることがある。一度食事に行った時に、リラックスされると靴下を脱いで話されるのを見てぶっくりしたが、これは彼の癖らしい。そのことも書いてあったのでよけいに面白かった。
いずれにしても、これまでにない笑いを作るために、社内外ディレクターとの正面切った言葉のボクシングが繰り返されていたようだ。理想は共有していても、そこに到達する道がわからないままに試行錯誤を繰り返していた。しかし、ある時一人のディレクターがすっと次のフェーズへと上昇していくにつれて、他のディレクターも次々と上昇していくなかで、現在の地位がある。
やりがいがあるとともに、厳しい現場のやりとりは、やがて他の番組へも広がっていった。こうした様子を松本さんとその関係者の証言を元に再構成した本である。売れているとのこと。その理由がよくわかる。価値ある本である。