大学に限らず、教育現場では、教師が学生・生徒に効果的に知識・思考方法を教える方法として、講義型授業が採用されている。この方法は、限られた時間に教師が学生・生徒に系統的に伝達する方法としては非常に効果的である。このメリットは今日でも有効である。
しかし、一方で、学生・生徒自身が、他の人と一緒になって意見や情報を交換し合うには適さない。その点では、(広い意味での)ワークショップ型の授業方法が効果的である。そこでは、互いに問いかけながら、自分の意見を作ることができるからである。
つまり、授業では、大きく分けて、二つのコミュニケーションの流れがある。一つは、教師と学生の流れであり、もう一つは、学生相互の流れである。伝統的な講義型授業では、前者は可能であるが、後者を作り出すのは難しい。しかし、ワークショップ型の授業では、前者も後者も可能である。と考えると、講義型とワークショップ型とは、学生相互のコミュニケーションの流れがあるか否かが分かれ目となる。もちろん、後者には教員も含めることが可能なので、それを踏まえれば、ワークショップ型の授業は、学びのコミュニティー作りに適しているのである。
二つの授業方法のもう一つの違いは、授業内容にある。講義型授業の場合、教師が提示した知識や思考内容を習得することにあり、ワークショップ型の場合には、参加者の主体的な学びから意見を作り上げていくことにある。前者が、正解に向けて一直線で進んでいくのに対して、後者は、手探りしながら新しいことを作り上げていくプロセスを重視する。
以上のような二つの授業方法は、どちらかが正しいか否かではなく、両者のバランスの中で選択されるべき問題である。けれども、現状の授業のほとんどは講義型授業であり、ワークショップ型授業を展開する余地は極めて小さい。そうした現状を変えていきたいと思って、大学教育学会のラウンドテーブルでワークショップ型授業の展開を継続しているし、自らの授業でも実践をおこなっているのである。こうした試みについて、最近色々考えている。