『ホテル・ルワンダ』

このところ映画を立て続けに見た。『ホテル・ルワンダ』と『My Father』だ。

かつて北陸にいた時には、映画愛好者とよく見に行っていたのだが、最近はめっきり行かない。しかも、独立系の映画は、話題になるないとなかなか見られない。京都には、京都シネマ、みなみ会館などの独立系映画館が残っており、まだ恵まれた方だと思うが、特別な会合以外には職場と自宅の往復生活をしているとなかなか足が向かない。

『ホテル・ルワンダ』http://www.hotelrwanda.jp/は、慶應義塾大学の金山智子さんから教えてもらった。東京で先行上映された時の彼女の映画評を見て、関西での上映を知ることができた。この映画は、アカデミー賞を受賞したが、ルワンダという知名度の低いアフリカの小国を舞台にした社会派作品であるため、わが国での上映予定がなかったとのこと。それを悔やんだファンがネットで署名活動をして上映にこぎ着けたという経緯がある。

1994年、ルワンダの多数派フツ族の急進派が少数派ツチ族を大量虐殺する悲惨な出来事が起こっていた。先進国は実質的にこの惨状を見殺しにする中で、少数の国連平和維持軍が最後の砦となっていた。国連軍や外国人が宿泊する高級ホテル支配人のフツ族ポールが主人公であった。ツチ族である妻を持つポール家族もこの争いに巻き込まれ、ホテルに逃げ込んだツチ族避難民1200人をさまざまな苦難を乗り越えながら、救い出したことで、彼はアフリカのシンドラーと讃えられている。

民族紛争の典型のような内戦であるが、民族的な差異は、外見上は区別がつかない。むしろ、長く植民地宗主国として君臨していたベルギー政府がこの民族的区別を意図的に誇大視したことが、独立後には対数派でありながらベルギー支配期に冷遇されていたフツ族の憎悪をかき立てたのであった。民族紛争とはいいながら、実際の原因はそれではないという好例である。それにしても悲惨な事件である。

アフリカの乾いた気候は、一見するとこうした残虐な事件とは無縁のように思わせる。しかし、憎悪、利権、野心などが外国勢力とつながることで、民族紛争の様相を見せるのは、ユーゴ紛争でも同様である。悲しい事件であるが、それを生き抜いた人々の隣人・家族愛を主人公にした素晴らしい映画である。署名活動の成果があってか、毎回大盛況の観客が押し寄せている。

『My Father』

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ホテル・ルワンダを見に行った映画館で偶然知った映画であった。

わずか一週間だけの上映というのが希少性を感じさせたが、それよりも私の元来の専門は、ドイツ外交史なので、ナチ時代の話だとつい見てしまう。

この作品は、アウシュヴィッツ収容所で数々の人体実験を行い”死の天使”と呼ぱれて恐れられ、戦後30年にも及ぶ逃亡生活を続けた医師ヨゼフ・メンゲレと対面した息子との葛藤を描いたドキュメンタリー作品の映画化である。父の罪深い過去を背負わざるを得なかった息子が成人して、父親と対面した。ブラジルの貧困地帯で質素に、かつ隣人から愛されながら暮らす生活に意外さを感じながらも、結局、父親は、ナチ時代と変わらない信念(それは優生学的な人種差別思想に満ちていた)を変えなかった。それによって、息子としての存在自体に悩みながらも、父とは分かり合えないことが明確になる。親子の葛藤は世の常であるが、それにしてもこのケースは思い過去を背負わざるを得ないゆえに、息子には過酷な人生である。

以前、東ドイツの都市ワイマールを訪問した翌日、郊外にあったブーヘンバルト収容所跡を訪問したことがある。敷地、建物の一部、写真、遺品を通じて残虐な過去をかいま見ることができたが、見学後、併設してあったレストランで食事する気持ちはおこらなかった。ただ、驚いたのは、レストランだけでなく、ホテルも併設してあったことだ。ちょうど修学旅行生が滞在していたが、気の弱い私にはとても耐えられなかっただろう。

二本の作品を見て、独立系映画を見る習慣が戻ってきた。

帰りには、『ボブ・ディラン ノー・ディレクション・ホーム』の前売り券を買ってしまった。これもわずか一週間の上映だが、なんと上映時間3時間という長尺である。神話に包まれたディランとその周辺の事情がわかる。60年代サブカルチャー好きにはこたえられない作品だと思う。

http://www.imageforum.co.jp/dylan/index.html

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