2013年4月、京都精華大学授業「グループワーク概論」で、ボランティア主体の授業をはじめました。
教室内には教師と学生だけでなく、学外からやってきた授業ボランティアや見学者が常時います。授業の進行は教師ではなく、授業ボランティア主体で進行していきます。私は、教師と学生だけで仕切られた閉鎖的な学びの場(教室)ではなく、社会のどこでも学びの場が生まれてほしいと思っていますので、教室であっても、学外の方が来られるようにしました。
また、この授業では重要な授業ボランティアを学外から募集することにしました。授業を常時オープンにすることは大学の学部幹部にとってはやめさせたかったようですが、大学設置基準に抵触しないので、渋々認められました。その後も常に継続が危ぶまれたのですが、2016年3月退職までなんとか継続しました。
【授業をオープンにするとは?】ところで、そもそも授業をオープンにするという発想がどこから沸いたのでしょうか?いろいろ考えたのですが、当時、なぜそんなことを思いついたのか未だに発想の源を見つけられていません。ですので、その解明は別の機会にします。ただ、はっきりしているのはそれ以前の活動や考え方が蓄積して実現に至ったのだと思います。かといって、実は、それまでの私は、授業公開には否定的でした。端的に言って、他人に授業を見せれば、欠点や課題を見せることになるので、やりたくないと思っていました。その背景には、自分が不十分なことを見せて他人に批判されるのは嫌だと思ったからです。これは、私だけではなく、他の教員も、いや、その他多くの方が共通して抱く気持ちです。教員は、他人に授業を批判されないために、完成度を極限まで上げます。もしその完成度が高ければ見学者は重箱の隅をつつくような意見しか言えないので、教員を誉めることしかしません。けれども、誉められたいと思っている教員が完成度を上げた授業をする場合、当然ながら日頃の授業を公開しません。完成度を上げて、ミスをなくそうとすると、誰にも頼らないでやろうとします。授業ボランティア
【授業ボランティアの授業は、学生の変容が大きい】私の授業の場合、授業ボランティアが進行しますので、正確に言うと私の授業ではありません。私がプロデュースするだけです。そういう気楽さはありますが、でも、外部の見方は私の授業です。ボランティアの方がされる授業は、はじめて大学で教えられる方も多いので、最初はうまく行かないこともあります。ボランティア一人ではなく、三名かとチームを組むので最初は連携がうまく行かないこともあります。でも、私は、最初はうまくいかなくて当然だと思っています。初めての体験ではそうあってもおかしくありません。しかしながら、ここがすごいのですが、最初の数回はまだ息が合わないにしても、6回目以後にはこれまでとは全く違う、素晴らしい授業を展開されます。それ以後は私とは異なる道で、私にはできない授業をされます。それは学生の変容が激しいことからよくわかります。授業の最初がたとえ不十分であっても、その後の変容が大きいし、私にはできない授業なので、これは一緒にやる価値は大きいです。このような授業ボランティアが進行する授業がいかに素晴らしいかを知っているのは、この授業に関わった人だけなのですが、他では決してマネできない授業ボランティアの功績です。私はその側にいられて光栄です。
【過去8年間続いた授業ボランティア主体の秘密】この授業について説明したり、学会・研究会で発表すると、いつも言われます。「実に立派な授業ですが、授業ボランティアは毎年集めるのは難しいのでは?」ボランティアが少ない時もありましたが、それでも過去8年間続いていますし、今後も続きます。続く理由の一つは、これまで大学で教える人は、非常勤講師やゲスト講師と言った金銭関係でつながっていましたが、この授業をはじめてわかったのは、金銭関係がなくても、大学やこの授業への期待感ややりがいを持つ広汎な層がいることを発見したからです。これについては別稿で説明します。もう一つは、教師である私自身です。ボランティア募集の告知先は、次第に同じ人に偏ります。これだと、ボランティア希望者はじり貧になってきます。毎回違った来られる理由は何かを考えると、私が常に新しい人とつながり、新しい価値を生み出している中で、ボランティア募集に応募される方が多いと思います。つまり、ボランティア募集は、教師自身が問われています。ということで、ボランティア主体の授業には、多くのボランティアが関わってくれていますが、それにも関わらず、教師自身がどのような生き方をするのかが問われています。
【教師の仕事は、「教えること」ではなく、ボランティアや学生が活躍できる場を創り出すこと】教師が立ち止まったらすべて終わります。貪欲に今の時代と向き合って、新しい取り組みをすることからしか始まらないのです。あくまでも私もやりながらわかったことですが、教師の仕事は、「教えること」ではなく、ボランティアや学生が活躍できる場を創り出すことです。私はその実現のために、ボランティア主体授業を実践しています。以後もこの授業について少しずつお話ししていきます。授業ボランティアについて関心をお持ちの場合にはお知らせ下さい。では、以後も続きます。
この授業については、以下の動画&書籍を参照下さい。
2013年授業動画
https://www.youtube.com/watch?v=-Vm6p50-QX8…
筒井洋一他編著「CT(授業協力者)と共に創る劇場型授業―新たな協働空間は学生をどう変えるのか」