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新年早々の5〜7日の三日間、国際関係論の研究会に参加して、報告しました。
年末年始が忙しかった一つの理由が、この報告準備でした。三ヶ年間の科学研究費最終年度にあたって、研究メンバーが自分のテーマについて、報告しました。私にとっては、現在ではあまり取り扱わなくなった、しかし未だに重要な国際関係論分野での研究です。
私の報告テーマは、「インターネットの管理をめぐる課題ーセルフガバナンスの再検討ー」です。1960年代末から開発されてきたインターネットの特徴と管理方法は、「自律・分散・協調」と「セルフ・ガバナンス」という言葉で表されますが、その当初の理念と現状との落差を明確にしようという意図を持っています。
報告レジュメは、以下です。
1)インターネット・ガバナンスとは、
インターネットを構築・運営・利用する上で必要なルールとルール作りの機構を検討すること
2)インターネット・ガバナンスの時期的変化
第一期:1960年代末〜1995年半ば
技術者だけの閉じた世界
ボランティア的な管理
第二期:1995年半ば〜現在
一般利用者を含む多様な構成
ビジネス的利害の肥大化
政府の介入
3)ICANNの設立
Internet Corporation for Assigned Names and Numbers
ボランティア的な管理から組織的な管理へ
業務内容
IPアドレス、ドメイン・ネーム、ルートサーバ管理だけの技術的組織
ラフ・コンセンサスは難しく、中央集権的な決定が不可欠
4)米国政府の介入
- 1998年1月 「グリーン・ペーパー」
政府の管理色が強く、批判を招く
- 1998年6月 「ホワイト・ペーパー」
新法人の機能,組織形態などの具体案 民間委譲
- 1998年秋 ICANN創設 「米国で法人登記した民間の非営利法人」
ICANNの抱える原理的矛盾
ICANNは、意思決定システムとしては政府のような中央集権的な採用していないものの、ICANNが担うIPアドレスとドメイン・ネーム・システムはインターネット上で一義に決まらなくてはならない
ドメイン・ネーム・システム(DNS)
ホスト名とIPアドレスの対応関係
ルートサーバ 世界には、13のルート・サーバ
米国 10,欧州2 日本1
それぞれの管理形態や方法は、個別に運用されている
5)ICANNのガバナンス上の矛盾
創設理事 特定の技術者だけで決定をおこなおうとする
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メンバーからの強い批判
米国政府の認証条件
ユーザの広範な参加
6)会員制度とグローバルな会員選挙制度の創設
- 2000年選挙実施
国益選挙 全登録者15万人のうち日本人が7万何千人
- 2001年「9.11事件」によるセキュリティー偏重
- 2002年2月 CEOのクーデター的提案
選挙制度の改善ではなく、選挙と会員制度の廃止提案
7)米国政府の態度変更
クリントン政権 民営化、自律促進
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ブッシュ政権 国家関与、国益重視
WSIS 中国やブラジルなどの反米的批判
8)世界情報サミット
- 2000年7月 沖縄サミット 「沖縄IT憲章」 DOTフォース設置
デジタル・デバイド
- 2001年国連総会 ITU、WSISの事務局担当
- 2003年12月 ジュネーブ(第1フェーズ)
インターネットガバナンスが焦点化
市民社会代表、限定的参加
- 2005年11月 チュニス(第2フェーズ)
市民社会の役割がより限定的
米国、欧州 ICANN維持
発展途上国 ITUへの移管
「チュニス・コミットメント」「チュニス・アジェンダ」
ICANNを含むこれまでの管理体制は維持しつつ、継続して検討
「マルチステークホルダー」方式による「インターネットガバナンス
フォーラム(IGF)」の設立
現在
インターネット・ガバナンス問題の根幹であるICANN問題は未解決
9)インターネット・ガバナンスの変化
- 利用者・参加者の量と質
- ビジネスの利害が肥大化
- セキュリティーに対する懸念の増大
サイバー犯罪条約
10)「自律・分散・協調型のネットワークシステム」
- 「セルフガバナンス」
- 「セルフ」 「ラフ・コンセンサス」
技術的な安定性を基本にしつつも、技術と社会との関係を考慮すべき