昨日、「広告表現技法」第二回の授業があった。
講師の石川さん以外に、ゲスト講師が多数の方がこられて、「北斗の拳」の制作および広告の手法についてきわめて率直に語ってくれた。ゲスト講師は、「北斗の拳」制作会社関係者など三名と大手広告会社からも一名の計四名であった。
制作会社『North Star Pictures』の山本秀基取締役、宮直樹部長、コアミックス社飛田野 和彦課長、電通営業部志村武彦さんが自分の人生を重ねながら、コンテンツについて語ってくれた(宮さんがかつて取り組まれた仕事は、先日ラジオカフェでイベントを一緒にした上田さんとつながっておられることがわかってうれしかったが、ここではその説明は省略する)。
山本さんは、若い頃から、自分が会いたい人ややりたいことをノートに書き留めていて、それを見ながらアンテナを張っていて、これまで自分の思いをすべて実現してきたとのこと。
たとえば、20歳の時に、ある講演会で面白い話をしてくれた女性記者に自己紹介しながら、自分に文章を書かせてほしいと頼み込み、二週間後には大手新聞家庭欄に連載記事を書いていたこと。また、集英社編集部に所属していた時には、原哲夫さん、ビートたけしさん、小泉純一郎さんなどを担当したことや、できるだけ多くの職業に従事している知り合いを持つことを信条にしてきたなど、まさに生まれながらの編集者という人生を歩んでおられる。
仕事柄、マスコミ就職講座などの講師を引き受けることがあって、学生から編集者になる方法について尋ねられることが多い。その時、山本さんは、編集者は職業ではなく、生き方が職業であることが重要と言っているとのこと。
雑誌編集者は学生の希望職種である。大手メディアの編集者に就くには激戦をくぐり抜けていく必要があるが、就職自体を最終目標にする人はそこで終わる。むしろ、その先をめざす、いやそれ以前に生き方自体が編集者である必要がある。
しかし、就職してから編集の仕事をすることよりも、人と人とを結びつけ、そこから新しいブレイクスルーを起こすような生き方こそが編集者には最も必要である。とすれば、編集者とは、雑誌・書籍などの教義の編集者だけではなく、職種にこだわらない生き方自体となる。
文章であれ何であれ表現し、それを他人の目にさらし、それを糧にして次をめざす。そうした実践なしには編集者ではありえない。大作家が書けなかれば、編集者自身の作品を差し替えするくらいのクリエーターとしての実践が必要だ。
山本さんの話を聞きながら、途中からは、自分の人生を振り返り、私自身にも突き刺さった。山本さんのおうような風貌とは別に、話された内容は人を惹きつける。もちろん、北斗の拳は魅力的なテーマであったが、それをプロデュースする山本さんの魅力がそれを倍加させていると思う。今回の講義に終わらず、これからも継続的な話をしていきたい。
この講義の非常勤講師である石川さんは、毎回、そして毎年新企画を考えてくる。
その一環でこれだけ多くのゲスト講師をお迎えして授業をおこなったが、一つの授業に専門家が五名も揃う授業は他にない。しかも、申し訳ない限りだが、自腹で参加して頂いたゲストもおられた。心からお礼を申し上げたい。
また、この授業を発展させられるかどうかは大学の力量が問われるところである。いい試練だと思う。
「大学はまだ生きている!」