ここ数年の自分のスタンスは、大学という場を横に広げることと、縦をつなぐことである。
前者は、本務校の大学だけでなく他大学や他の団体・企業などへと広がることであり、後者は、高校ー大学ー社会をつなぐことである。今日は、その中の縦のつながりの中での高校での実践を紹介しよう。
大学コンソーシアム京都の事業として、高校の授業に大学教員が支援するという事業がある。業者が介在した出前講義でも、系列校での授業でもない、入試とは離れた、高校と大学との教育連携を進めようとしている。そこで、高校側が比較的時間の都合がしやすい土曜日を使って「土曜セミナー」をし始めている。
ある府下の高校が申し出に対して、快く受け入れてくれた。先生方から高校一年生の現状についてお話を聞いたのだが、高校の文系・理系を選択することがかなり難しい中学生がいるとのことで、高校ではそうした進路選択の取り組みをし始めているそうだ。ただ、高校の先生も手探りの状態のようで、大学教員との連携について非常に積極的に取り組んでもらっている。
大学側は、高校と大学は対等であり、大学側の意図を押しつけないことを伝えた。まず、高校側が必要と思っていることから始めようということである。その上で、授業の中に、大学生を参加させて、彼らの話を中心に授業を組み立てる機会を作って欲しいと要望した。
そうした話し合いの後、9月と10月に一度ずつ授業をさせてもらった。9月のテーマは、高校時代の学びについてなので、もう一人の大学教員が理系の学生を、私が文系の学生を推薦した。後者の学生は、理系の学生だが、文系の職種に就職が決まったという意味で文系とした。それぞれに教員が推薦した学生同士が実は、高校時代の親友であり、相互に励まし合ったいたことがわかった。実に奇遇な出会いだが、利発な学生は相互に惹かれ合うということなのだろう。
一人は、障害のある学生だが、それを感じさせない非常に前向きな生き方を生徒に伝えた。もう一人の学生も高校時代の生活から自分の学びについて語った。その後、教員も話しをしたのだが、やはり学生の話は実にインパクトがあった。
11月は、私が主として進行した。 60分間で、進路選択について何が出来るかと考えた。そこで、
- 大学の授業は、意欲的な授業がたくさんある。自己宣伝を含めて、他大学の学生がうらやましがる授業が精華大にはある。もちろん、他大学にもある。
- 仲間との連携が大学の授業では必要なことを訴えた上で、ワークショップで仲間との結束を高まるワークをした。
- 自分の得意を見つけ出すという、セルフエスティームを高めるワークを。
- 大学コンソーシアム京都の単位互換授業のタイトルから、自分の取りたい授業を選んでもらうワーク。
- 自分が将来なりたい人間像を書き出した。
- そして、一人ではそれを叫ぶのは恥ずかしいので、全員で一斉に、京都市内の大学に向けて叫んだ。
1時間では忙しすぎたのだが、一つの達成感を感じるためにはどうしても必要だった。
結果は、生徒の反応はなかなかよかった。授業終了後に、応接室で先生と話し合っていたら、生徒がわざわざ尋ねてきてくれた。あまりにも面白そうな生徒だったので、特別企画を実施することにした。高校側も喜んでもらえたので、これは是非実現していきたい。
三学期にも授業に伺うことになったので、高校二年生に向けての予定を決めてまた仕込みをおこなうことになる。
私は高校現場とまったく接点なく生きてきたのだが、意欲的な高校や先生がたくさんおられることを知って大変勇気づけられたのだった。