今夏から、岩手県の高校で、精華大の授業を実施します!

昨年、岩手県住田町を拠点として、釜石市や大槌町での震災ボランティア活動には京都精華大からも教員や学生が関わってきました。震災への関わりをより強く、継続的にするために、この一年間、現地とのやりとりを繰り返してきました。

それが結実して、8月20日〜24日まで岩手県立高校三校(遠野緑峰高校、住田高校、釜石高校)に京都精華大の学生が訪問し、大学で行われている授業を大学生が高校生に向けて実践します。授業内容は、高校別に異なりますので、それを成功させようと、大学生は現在準備に追われております。

また、このプロジェクトに対して興味を持つ高校生も参加します。関西の高校生が岩手県の高校生に向けて授業をするという中から、高校生の新しい可能性も広げることができます。プロジェクトの詳細については、以下の資料を参照ください。

私自身は、このプロジェクトの初めから関わっていますので、これが実現することに感動を覚えています。現地での新しい広がりを思考しつつ、今後も継続するように基盤を固めたいと思います。

以下が、プロジェクトの詳細です。

京都精華大学人文学部震災復興教育プログラム
高校生の将来を大学生と創るワークショップ授業
—岩手県立高校での民話、デジタルストーリーテリング、まんが—

プログラム概要:
京都精華大学人文学部では、今夏8月20日〜24日の一週間、震災復興策の一環として、震災被災地および周辺地域にある岩手県立高校三校(遠野緑峰高校、住田高校、釜石高校)と提携して、京都精華大学の授業を現地でおこなう。これは、京都精華大学の大学生が、現地で授業をおこなうことで、被災地の高校生が地域資源を再発見して、故郷への誇りを取り戻し、同時に、高校生の将来の夢を3分間のムービーにして多くの人に夢の大切さを訴えるというものである。震災復興と若者の未来の夢を語るに当たって、最新のデジタル機器であるiPadを利用し,撮影した画像を,制作者自身が録音した語りでつなげていくデジタルストーリーテリングという手法を活用する。この授業は、今後5年間継続予定であり、震災復興と高校生への継続的な支援に取り組む予定である。
この授業をおこなうに当たって、iPadや通信機器メーカーとの協賛をえて、高校・大学・企業とがタイアップして、創発的な成果を実現する予定である。

これまでの経過:
京都精華大学では、昨年3月11日東日本大震災で被災した地域や人々への支援をおこなってきた。震災支援NPOの支援を受けながら、大学生や教員が岩手県釜石市大槌町大船渡市の仮設住宅での談話室での傾聴ボランティアをおこなった。ボランティアは、深刻な被災をした現地の人々の話を聞き、子供と遊び、共に交わる中で、京都では体験できない貴重な経験をした。そこで見聞きした話題は、日常生活のささいな話しがありつつも、やがて打ち解けてくるにしたがって、震災当時の被災体験を聴くこともあった。また、遊びにやってくる子供達とも積み木をしたり、お絵かきしたり、ボール遊びをしたりしていたが、ふとしたことをきっかけにして、震災当時の体験がフラッシュバックすることもあった。その現場に遭遇したボランティアは、子供達の気持ちをただ受け止めることしかできなかった。

被災地復興に今後必要なこと:
被災地の復旧・復興のために、政府・自治体・企業はもちろん、多くの団体、NPO、市民などの協力が必要である。しかし、京都精華大学としての支援策は、人文学部や芸術系学部である特徴を活かすような形が望ましい。そこでは、町を物理的に再建・新設ことではなく、むしろ被災者の気持ちを癒し、勇気づけ、未来への希望へという心の復興を支援することが大切である。その中で、精華大学としては、今後の継続的な復興への関わりを続けていくためには、どこに尽力すればいいのかを議論した。その結果、主として教育分野において、小学生から高校生までの生徒の中でも、進学や就職という、これまでの人生の中で、最も大きな選択を迫られている高校生を支援することに決定した。小学生や中学生の大半は地域の学校に進学する。しかし、高校生は、進学や就職かの選択を迫られると共に、遠隔地への移動を迫られ、大きな環境の変化の中で、新しい人生を歩むこととなるが、必ずしも有効な支援策が講じられているとはいいがたい。
人生上の大きな決定を求められる高校生には、進路に関する適切な情報提供よりも、むしろかれらの相談相手が必要である。相談相手というと、普通は、高校教員であったり、親であったりするが、若者の揺れ動く感情に適切に寄り添うためには、高校生よりも少し上の世代の大学生の存在が重要である。
すなわち、教師や親といった何十年も離れた大人のアドバイスは有効であるが、同時に、数年上の先輩である大学生の存在は、高校生にとっては、自らの視点に近い人生のロールモデルとして貴重である。しかしながら、被災地周辺には大学がなく、こうした接触ができないでいる。そこで、京都精華大学人文学部では、大学生にとっては夏休み期間中であり、高校生にとっては二学期の授業期間(8月18日から二学期が開始される)に開催することで、一週間で三校の授業をするために滞在することが可能となった。また、一度交流した高校生とは、その後もテレビ会議やソーシャルメディアを通じたり、また、岩手県立高校の修学旅行先が京都であることから、夏の授業数ヶ月後(11月末〜12月初め)には、大学生のいる京都で再会することが可能である。このように被災地での授業プロジェクトにとどまらず、テレビ会議やソーシャルメディアという情報ツールを活用したり、京都での再会といった多様な交流手段を通じて、継続的な交流が可能になる。

高校における授業展開:
京都精華大学人文学部では、昨秋から被災地の高校との間で、当大学との共同授業の実施可能性について高校を訪問して協議してきたが、昨秋、三高校(遠野緑峰高校、住田高校、釜石高校)との授業を実施することで合意した。8月20日〜24日の一週間に、大学生30名が三高校を移動しながら、それぞれ異なるテーマの授業をおこなう。
1.岩手県立遠野緑峰高校ー民話朗読・伝承マップワークショップー
遠野市は、柳田国男の『遠野物語』以来、日本民話のふるさととされ、民俗研究の拠点となってきた。しかし、21世紀の今日、地域の伝統文化はその継承者の不足に直面し、語り部の養成を行政が行うことさえ珍しくない。伝承保存を企画して2010年1月に制定された(遠野遺産99認定制度)はそのようなとりくみの一端であったが、東北大震災の影響を受け、いまだ伝承マップの活用もままならない状況である。
この授業では、地元の高校生とともに地元学方式での学びも取り入れながら、遠野遺産99の伝承地を訪れ、あわせて史跡にまつわる口碑(オシラサマ、河童淵、ザシキワラシ・・・など)を現代語に翻訳した台本を作り、『新遠野物語』の朗読公演を興行する。また、高校生たちとの交流をとおして、被災地の現状を把握し、いま遠野の地で物語を語ることの意味について考える。学生は、こうした公演やマップ作りを担当すると共に、その様子を撮影し、インターネットに公開することで、授業プロジェクトの成果を広げることをめざす。

2.岩手県立住田高校 —高校生が夢を語るiPadによる
デジタルストーリーテリング—
住田高校は、被災地から離れた山間部にあるが、沿岸部からの生徒も通学しているので被災者を抱えている高校である。当初、高校生に被災当時の過去を語ってもらい、体験を掘り起こそうと考えたが、そのことは生徒にとっては時期尚早という場合もあり慎重は配慮が必要である。けれども、被災の有無にかかわらず、生徒はやがて高校を卒業し、進学したり、就職したりして、新しい人生を歩む選択を迫られる。住田高校では、全校生徒135名すべてをこの授業に参加させ、全学的な取り組みとして意欲的な体制を整える予定である。
授業においては、(大学教員ではなく、)大学生が高校生に対して、自らの未来を語り、デジタルストーリーテリングの実例を紹介しながら、教えていく。大学生の例を踏まえて、高校生が自身の未来を語るストーリーを創り、最新の情報機器であるiPadを使って、そのストーリーを新しいデジタル世界での転換へと変換する。これによって、高校生の未来の可能性を開いていく。

3.岩手県立釜石高校 —地元の素材からマンガを制作する—
釜石市は、沿岸部にあり、市内の重要部分が津波の被害を被っている。幸いより高地にある高校は、直接的な被害を受けることはなかったが、高校生のかなりの部分が被災者となっているため、現在でも仮設住宅から通学している生徒も多い。
釜石高校は進学校であるとともに、美術教育にも尽力しているため、芸術志望の高校生が多い。かれらの多くは、漫画家志望が多いために、マンガ学部の学生が中心になって、高校生にマンガ制作講座をおこなう。マンガ学部生のなかでも、既にマンガ雑誌編集部が付いている学生や同人誌その他でもプロレベルの能力を持っている学生もいる。
かれらの経験を実習形式で高校生に伝えることで、高校生がより高度な描写技術を身につけると共に、マンガやアートの可能性について話し合うことが可能となる。

以下は、授業シラバス:
1)遠野緑峰高校シラバス
地元高校生と行く『遠野物語』の旅-歩く、語る、つくる
<講師>堤邦彦・恩地典雄(京都精華大学人文学部)
<開講形態>4~7月の事前学習5コマ、
8月20日から24日までの現地集中授業(4泊5日程度)8コマ、
9~11月の事後学習2コマ
<授業の概要及び目的>
東北大震災は地域社会に対しても未曾有の打撃を与えたが、地域と周りの人々の努力により懸命な復興活動が積み重ねられている。岩手県遠野地方もそのような地域のひとつである。
遠野の地は、柳田国男の『遠野物語』以来、日本民話のふるさととされ、民俗研究の拠点となってきた。しかし、21世紀の今日、地域の伝統文化はその継承者の不足に直面し、語り部の養成を行政が行うことさえ珍しくない。伝承保存を企画して2010年1月に制定された(遠野遺産99認定制度)はそのようなとりくみの一端であったが、東北大震災の影響を受け、いまだ伝承マップの活用もままならない状況である。
この授業では、地元の高校生(県立遠野緑峰高校)とともに地元学方式での学びも取り入れながら、(遠野遺産99)の伝承地を訪れ、あわせて史跡にまつわる口碑(オシラサマ、河童淵、ザシキワラシ・・・など)を現代語に翻訳した台本を作り、『新遠野物語』の朗読公演を興行する。また、高校生たちとの交流をとおして、被災地の現状を把握し、いま遠野の地で物語を語ることの意味について考える。
受講生にはそれぞれの関心領域(歩く、語る、つくる)についての能力を伸ばすことを期待し、地元高校生には地域への愛着を深めることを通して、遠野に活力をもたらす人材への成長を期待する。

2)住田高校シラバス
テーマ:「未来の自分を語る」
ー住田高校生と精華大生のデジタルストーリーテリングー

<主旨>岩手の高校生が京都の大学生と授業中で初めて出会う。テーマは、未来の自分を語る。大学生が高校生に向けて呼びかける中で、どのような未来が見えるのか?
それをiPadなどの情報機材を使った写真と文字を素材にして、スライドショーを作る。それを全員の前で発表して互いの未来を感じあうことで、高校生の将来の新しい可能性を発見する。

<講師> 筒井 洋一(京都精華大学人文学部)

1.ガイダンス デジタルストーリーテリングとは
2.グループ分け 機器操作の習得と、テーマについての設定
3.グループ毎に調査地に出発するか、学校でゲストへのインタビューをおこなう
4.スライドショーの編集
5.グループ発表   制作意図をプレゼンし、作品を発表
6.ゲストや教員からの講評

3)岩手県立釜石高校シラバス  —地元の生活からマンガを制作する—

<講師> おがわさとし(京都精華大学マンガ学部)

<主旨>マンガは、雑誌やネットに氾濫しているエンターテインメントの作品だけではない。むしろ、震災という大災害に見舞われた高校生の生活の中からテーマや素材を発見することができる。社会に存在する課題と向き合う中で、新しいエンターテインメントとしてのマンガを制作することを実習形式で学んで行く。

1. 高校生の興味関心からテーマの選択、決定
2. ネームの作成
3. ネームの完成
4. 大学生や教員からの講評
5. 作品発表

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  1. ピンバック: 神戸の私立高校の授業を見学して、とても感激した! | つつい・めでぃあ

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