グループワークを伴う大規模授業をZoomで可能にするために(4)

リアルの対面授業・セミナーをオンライン授業に変えていくと、リアル授業自体が変わっていきます。

変化の一つは、リアルの授業・研修は教師一人でやっていたのですが、オンライン授業・研修は教師一人でやらない方がいいことです。

オンライン授業で、Zoomを使うと、初心者がホストになって機能を駆使するのはまず無理です。三年前から授業のオンライン化を志向している私だとかなりできますが、一般には無理しない方が良いです。むしろ、教師は、参加者の学びを促進することに全力を注ぐべきで、Zoomの技術的なことまで知る必要がありません。教師とテクニカルサポートとが連携していくことでオンライン授業は効果的なものになります。

このように言うと、管理者から必ず出てくるのは、「これまで教師一人分のコストでよかったものが、オンライン化するとテクニカルサポート代が追加されてコスト高になる」という意見です。確かに一授業に要するコストは上がりますが、同時に、場所代、交通費・時間などは劇的に下がります。さらに、テクニカルサポートの力量が上がってくるともっと工夫も可能です。

このことは、リアルの授業でも、教師は本当に学生の学びを促進することだけに専念できているのかという問いかけになります。むしろ、教師一人でできる授業しかやって来なかったのはないでしょうか?

教師が受講生全員の学びを促進できることは幻想です。「教師が全員の学びを促進できる」という前提を崩すことができないのは、教師集団や大学側への配慮であることが浮かび上がって来ます。

また、教師よりも外部の専門家が担当した方がいい場合も教師がやってしまうこともあります。教師が受講生への学びの提供をすべて独占しているところの問題も浮かび上がります。

リアル授業をオンライン化するにあたって変化すべきもう一つのポイントがあります。リアル授業は、アクティブラーニングのようなグループワークをしやすいのは事実ですが、良くも悪くも教師の枠組みで授業の進行がしやすいです。受講生全員に対する一覧性が高いですし、直接学生とやりとりすることも可能です。

一方、オンライン授業では、一覧性は高くないですし、教師が話すときには、学生は音声をミュートする場合が多いので、声で反応が返ってきません。ですので、教師の枠組みで進行させることが難しいです。

そこで、オンライン授業では、学生の反応がどんどんでるようにして、学生を巻き込みながら進行させるとやりやすいです。リアル授業よりも、学生の反応が出しやすい仕掛けがあります。これを生かせば大きな成果が得られます。こうしたオンラインの経験によって、リアル授業の時には、いかに教師が自分の都合で進行させていたのかがわかってきます。

以上、リアル授業をオンライン化すると、むしろリアル授業自体の変容を促進することになることを述べました。

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グループワークを伴う大規模授業をZoomで可能にするために(4) への2件のフィードバック

  1. 塩川信明 のコメント:

    筒井先生 示唆に富む記事をありがとうございます。大変勉強になります。実際に4月からの大学講義にZOOMの利用を考えておりますので、ご経験シェアしていただくことは、とてもありがたく感じております。
    今回の記事にてご指摘の「学生を巻き込んでいく手法」については、その必要性を大きく感じています。今のところ、グループワークの内容を如何に全体にシェアしていくかについて、いくつか試しているところです。この辺りについてもご教示いただけますと、とてもありがたく思います。

  2. admin(Tsutsui) のコメント:

    コメント頂きありがとうございます。
     対面授業での教師の役割を見直すきっかけに、オンライン授業がなればいいと思います。対面授業での特徴とオンライン授業のそれとが生かされれば、もっとよくなります。

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